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深本志奈乃(TOSSきときときっと)
中学生に「自画像を描きます。」と言うと、大ブーイングが起こる。「えーっ、なんでそんなもん描くの?」「絶対いやだ!」と大騒ぎである。そこで高橋正和氏の実践、一版多色版画「鏡の中のぼく・わたし」を追試した。この題材は中学生も熱中して取り組んだ題材である。
↑生徒作品(中学1年)↑
準備物
@ 油性黒マジックペン(中細と極細の両方がついてるもの)
A 4B鉛筆
B 版木(30cm×20cm)
C 黒画用紙
D 水彩絵の具(ポスターカラー)
E バレン
F 彫刻刀(小丸刀、三角刀)
G セロハンテープかガムテープ(版木に黒画用紙を固定する)
H 手鏡
導入
「何をしているところでしょう?」
鏡の前にいるように髪をとく、歯磨きなどの身振りをする。いくつかやってみせると盛り上がる。
「今日から『鏡の前のぼく・わたし』というテーマで一版多色版画をします。」
1 鏡の中の顔を描く
あらかじめ版木に薄墨を塗っておく。(彫った部分を分かりやすくするため。)
「鼻の穴を描きます。」
「よ〜い、スタート!」
版木に直接マジックで、カタツムリが這うようにゆっくりと描く。
だいたい画面の真ん中、少し右か左に寄ったところに描く。
@ 鼻
A 口
B 目
C 眉
D 髪
E 顔のりんかく
F 耳
の順に描き進める。
唇やほっぺの柔らかさや、あごのごつごつした感じなどを表現するように言う。その部分を触らせてから描かせる。
2 鏡の中の手を描く
「鏡の前で何をしているところにする?」
「決まった人、手のポーズをやってみて。」
手のポーズを決める。(例:髪をとかすポーズ、歯磨きしているポーズ、コップを持っているポーズ、など)
ペアをつくり、お互いに手を見合って描く。
歯ブラシやくしなど手に持っているものも描く。
3 後頭部を描く
画面の手前に描く。髪型の似ているもの同士のペアで見合って描く。
4 鏡の中の胴体を描く
鏡の中の首、胴体を描く。
5 鏡の縁を描く
鏡の縁のデザインを考える。鏡の縁は複雑な形にした方が見栄えがする。
鏡の形も長方形、円形、楕円形などいろいろあってよい。
鏡の縁の形をいくつか色画用紙でかたどって用意した。
6 彫り
小丸刀で太めに長く彫っていく。
線の太さが均一になるよりも、細くなったり太くなったりするところがあってよい。
酒井先生は「米粒をつなげるように(文責:深本)」と言っている。
彫るときもゆっくり彫る。
勢いよく彫ると、直線的な線になってしまうし、勢いあまって彫りすぎてしまう。
けがをしないために次の2つに注意する。
@ 彫刻刀の持ち方をしつこく確認する。(間違った持ち方はけがの原因になる。)
A 彫るときは常に前に向かって彫る。(向きを変えたいときは版木をまわす。)
下絵を描いた順で彫っていく。
@ 顔(鼻→口→目→眉→髪→顔のりんかく→耳)
A 手
B 手に持っているもの
C 服
D 鏡の縁
髪の毛、まつ毛など細かいところは三角刀で彫る。
7 刷り
一版多色版画の仕上がりを左右するのは、刷りである。ここで失敗すると台無しである。
刷りを成功させるポイント
@ 版木に黒画用紙をセロハンテープかガムテープでしっかりと固定する。
A 絵の具はドロドロにする。(水を入れすぎない。)
B 少しずつ色を塗って刷る。
C どの色にも必ず白を混ぜる。
一気に広範囲に色を塗って刷ろうとすると、絵の具が乾いてしまってきれいに刷れない。
少しずつ色を塗って刷っていく。水加減が命である。絵の具に絶対に水は入れすぎてはいけない。私はいつも生徒に「とんかつソース状」と言っている。
手のつめなど、小さい部分から刷ると失敗が少ない。
下絵の順に刷っていく。
@ 鏡の中の顔
A 鏡の中の手 (@とAは逆でもよい。)
B 鏡の外の顔、手
C 髪
D 鏡の縁
鏡の中の顔以外の部分は色を付けない。
鏡の周りの壁の部分は、私は色を付けても付けなくてもどちらでもよいことにした。
黒画用紙が所々残って見えるが、それが版画の味わいでもあるので残っていてよい。
また、部分的(ほおや髪の毛など)に色を重ねて刷ってもおもしろい。重ね刷りをする場合は、下の色が完全に乾いてから行う。
《先行実践》 酒井臣吾監修:『一版多色刷り版画で子どもの生活を描く』(明治図書)
《参 考》 高橋正和著:『酒井式描画指導法Q&A小事典』(明治図書)
WEB酒井式描画指導法:http://homepage1.nifty.com/tossbizyutu/sakai-mirror.htm