◎結果
知的障害がある児童(小学部3年生)に,このカードを使って「使い方の例」のような指導をしたところ,市販のカードでは,覚えられなかった漢字を,一度に3文字も覚えることができた。指導時間は,わずか4分である。4分で3文字を覚えたのである。
クラスの児童2名に同じ結果が出た。
市販のカードの数十倍の効果があると,実感した。
◎分析
「なぜ輪郭漢字カードだと覚えたのか」
@漢字が中心箇所にあるので,自然にそこに目が行く。と同時に,カード全体を一枚の絵として捉えることができるのではないか。
A裏面を見た際,その周りにあった輪郭の情報が思い浮かぶのではないか。
→「残像が残るのではないか」
■結果と分析
<コラム>
◎そもそもなぜ,「輪郭」なのか。
「輪郭漢字カード」は,そもそも,なぜ「輪郭」なのか,
という質問を受けるときがあります。
輪郭の「線」だけではなく,その絵(全体)に色が塗ってあってもいいのではな
いかという,質問です。
輪郭漢字は,絵の情報量を減らすことを目的としています。
市販のカードを見ていただくとお分かりのように,
絵が主役になっています。漢字は左上の方に小さく書かれています。
これでは,
漢字を教えようとするのに,絵に目が行ってしまいます。
絵の情報(印象)が強すぎるためです。
我々(五十嵐,山本)は,「漢字を教えるのだから,漢字を主役にしたい」と思いました。
よって,
漢字を中心に置き,絵の情報を輪郭だけにし,漢字の周りに配置しました。
そこで,最初の質問ですが,
もし,絵に,べた塗りで色が付いてたとすると,
絵の情報(印象)が強くなり,やはり絵に目が行ってしまいます。
漢字に目を行かせるためには,やはり「輪郭」だけが適切な情報量なのです。
注)
1 輪郭の線は,必ず色が付いています。「苺」の輪郭なら,実が赤で,ヘタが
緑の線です。黒の文字である漢字と区別する必要があるからです。
2 その輪郭の色は,はっきりとした「赤」「緑」ではありません。
分かりやすく言うと,マジックで書いた線ではなく,
色鉛筆(クーピーペンシル)で書いたようなパステル調の線です。
これも,漢字に目を行かせるための配慮です。
カード制作:山本いずみ
↑漢字を教えるのだから,漢字を主役にしたい。
表面においても,漢字に目を向かせることに成功している。